【雑記】筋肉自慢の先輩との淡く腹立たしいささやかな夏物語
今週のお題「人生最大の危機」
~筋肉自慢の先輩 と かよわい僕~
「僕は悪くない。でも先輩も悪くない。でもこの状況、どうすればいいんだ!!」
筋肉先輩とのプロローグ
夏の体育館はムッとするほど蒸し暑く、立っているだけでもジワジワと汗が噴き出してくる。体育館にはバスケ部が使っているタイマーの音や女子バレー部の声、外から降り注ぐセミの声に満ちあふれていた。
男子バレー部の僕は、M先輩と黙々とパス練習に打ち込んでいた。部活の顧問の先生が来るまでは、話しながら練習をしたり、時にはふざけて練習になっていなかったりする光景はしばしばだ。これにいちいち反応していては中学生の部活動は身に入らない。
唐突な筋肉クエスチョン
「おい、バーベル何キロまで上げれる?」パスをしていたら急に先輩が声をかけてきた。M先輩は筋トレが趣味で、鍛えた筋肉が自慢だ。僕たち後輩が筋肉自慢の主な対象で、何度も腕や太ももの筋肉を触らせてきた。自分で言うのもおかしいが、僕たち後輩は筋肉を触った後のリアクションがよい。
「うわぁ!すごいですねー!」
「毎日筋トレしたら自分もこうなれますか!?」
先輩も常々満足顔であった。
バーベルなど上げたことのなかった中学生の僕は答えに窮していた。そもそも先輩の狙いは僕のバーベル上げの記録を聞くことではない。自分のバーベル上げの記録を自慢することである。そのことに気付くのには時間はかからなかった。
「じゃあ腹筋割れてる?」答えられない僕を見かねて、先輩は次の質問を投げてきた。この質問には答えやすかった。割れていないということを早々と伝えると、予想通り先輩は自分の割れた腹筋を触るよう僕に提案してきた。先輩の割れた腹筋はゴツゴツとしていた。しかし言うまでもなく自分の心を引くものではない。「すごいですね!これがシックスパックってやつですね!!」例のごとくの模範解答で先輩の筋肉承認欲求は満たされた。いや・・・満たされすぎた。先輩が次を要求してきたのだ。
まさかの筋肉パフォーマンス実演と憧れ
「おい、俺の腹、思いっきり殴ってこい!全然痛くないから!」こう言うのだ。ろくに喧嘩もしたことがない自分だ。人なんて殴れない、ましてや先輩のお腹に拳をうずめるなどもっての他だ。僕は丁重にお断りをした。しかし、それで引き下がる先輩ではない。自分の腹筋の硬さがいかに硬い物かを実感をもって伝えなければならないのだ。先輩の圧に負けて、僕は軽く腹筋にパンチをおみまいした。
「おい、本気でやれ!全然じゃないか!」遠慮している僕にあきれて、本気のパンチを再度要求してきた先輩の瞳は本気そのものだった。これ以上先輩を待たせてはいけない。そう、僕は後輩なのだ。殴れと言われたら殴る。それが後輩なのではないか。
僕は全力のパンチを腹筋におみまいした。殴った瞬間、大丈夫かな?そう思ったが、そんな心配は杞憂だった。先輩はケロッとしている。「さすが!先輩!!」この時点で僕は先輩のことを本当に「すごい」と思えるようになり、褒め言葉にも段々感情がこもってきた。更に気をよくした先輩は僕に最後の要求をしてきた。
筋肉フィナーレ
「上向きに寝るから、お腹のところに乗ってこい!」まさかとは思ったが、あの尊敬すべき筋肉先輩である。自分なんかが乗ったところで苦しいはずがない。またあのケロッとした顔を見せてくれるに違いない。先輩への信頼は厚かった。
僕はシューズを脱ぎ、そっと片足を先輩のお腹の上に乗せた。先輩の真剣な顔には汗が光っている。「失礼します。」と僕は両足を乗せた。当時の体重は50㎏ほどだっただろうか。その全体重が腹筋にのしかかっているのだ。すごい!すごすぎる!僕の先輩の筋肉は本当にすごい。
しかし悲劇は突然に訪れるものだ。僕の尊敬すべき先輩は一言でいうと力みすぎた。「プ~」という快い音と共に先輩のお尻からガスが放出された。僕はすかさず足をのけた。長い沈黙が続いた。あるいはそれは数秒のことだったのかもしれない。少なくともこの時の自分には長い沈黙であった。
「僕は悪くない。でも先輩も悪くない。でもこの状況、どうすればいいんだ!!」僕の頭の中は半ばパニックに陥っていた。
先輩は黙って立ち上がり、水を飲みに外の水道へ歩き出した。「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。」いつも見ている先輩の大きな背中が、いつもよりも小さく見えた。
あなたも先輩のような理想の筋肉を!!
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やっぱり腹筋といえばワンダーコア!
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男は黙って 懸垂!
使い方知らないけど腕ムキムキになるらしい。