トビウオ

本の紹介や日々思うことを云々

【雑記】筋肉自慢の先輩との淡く腹立たしいささやかな夏物語

今週のお題「人生最大の危機」
~筋肉自慢の先輩 と かよわい僕~

 

 「僕は悪くない。でも先輩も悪くない。でもこの状況、どうすればいいんだ!!」

筋肉先輩とのプロローグ

 夏の体育館はムッとするほど蒸し暑く、立っているだけでもジワジワと汗が噴き出してくる。体育館にはバスケ部が使っているタイマーの音や女子バレー部の声、外から降り注ぐセミの声に満ちあふれていた。

 男子バレー部の僕は、M先輩と黙々とパス練習に打ち込んでいた。部活の顧問の先生が来るまでは、話しながら練習をしたり、時にはふざけて練習になっていなかったりする光景はしばしばだ。これにいちいち反応していては中学生の部活動は身に入らない。

唐突な筋肉クエスチョン

 「おい、バーベル何キロまで上げれる?」パスをしていたら急に先輩が声をかけてきた。M先輩は筋トレが趣味で、鍛えた筋肉が自慢だ。僕たち後輩が筋肉自慢の主な対象で、何度も腕や太ももの筋肉を触らせてきた。自分で言うのもおかしいが、僕たち後輩は筋肉を触った後のリアクションがよい。
「うわぁ!すごいですねー!」
「毎日筋トレしたら自分もこうなれますか!?」
先輩も常々満足顔であった。

 バーベルなど上げたことのなかった中学生の僕は答えに窮していた。そもそも先輩の狙いは僕のバーベル上げの記録を聞くことではない。自分のバーベル上げの記録を自慢することである。そのことに気付くのには時間はかからなかった。

 「じゃあ腹筋割れてる?」答えられない僕を見かねて、先輩は次の質問を投げてきた。この質問には答えやすかった。割れていないということを早々と伝えると、予想通り先輩は自分の割れた腹筋を触るよう僕に提案してきた。先輩の割れた腹筋はゴツゴツとしていた。しかし言うまでもなく自分の心を引くものではない。「すごいですね!これがシックスパックってやつですね!!」例のごとくの模範解答で先輩の筋肉承認欲求は満たされた。いや・・・満たされすぎた。先輩が次を要求してきたのだ。

まさかの筋肉パフォーマンス実演と憧れ

 「おい、俺の腹、思いっきり殴ってこい!全然痛くないから!」こう言うのだ。ろくに喧嘩もしたことがない自分だ。人なんて殴れない、ましてや先輩のお腹に拳をうずめるなどもっての他だ。僕は丁重にお断りをした。しかし、それで引き下がる先輩ではない。自分の腹筋の硬さがいかに硬い物かを実感をもって伝えなければならないのだ。先輩の圧に負けて、僕は軽く腹筋にパンチをおみまいした。

 「おい、本気でやれ!全然じゃないか!」遠慮している僕にあきれて、本気のパンチを再度要求してきた先輩の瞳は本気そのものだった。これ以上先輩を待たせてはいけない。そう、僕は後輩なのだ。殴れと言われたら殴る。それが後輩なのではないか。

 僕は全力のパンチを腹筋におみまいした。殴った瞬間、大丈夫かな?そう思ったが、そんな心配は杞憂だった。先輩はケロッとしている。「さすが!先輩!!」この時点で僕は先輩のことを本当に「すごい」と思えるようになり、褒め言葉にも段々感情がこもってきた。更に気をよくした先輩は僕に最後の要求をしてきた。

筋肉フィナーレ

 「上向きに寝るから、お腹のところに乗ってこい!」まさかとは思ったが、あの尊敬すべき筋肉先輩である。自分なんかが乗ったところで苦しいはずがない。またあのケロッとした顔を見せてくれるに違いない。先輩への信頼は厚かった。

 僕はシューズを脱ぎ、そっと片足を先輩のお腹の上に乗せた。先輩の真剣な顔には汗が光っている。「失礼します。」と僕は両足を乗せた。当時の体重は50㎏ほどだっただろうか。その全体重が腹筋にのしかかっているのだ。すごい!すごすぎる!僕の先輩の筋肉は本当にすごい。

 しかし悲劇は突然に訪れるものだ。僕の尊敬すべき先輩は一言でいうと力みすぎた。「プ~」という快い音と共に先輩のお尻からガスが放出された。僕はすかさず足をのけた。長い沈黙が続いた。あるいはそれは数秒のことだったのかもしれない。少なくともこの時の自分には長い沈黙であった。

「僕は悪くない。でも先輩も悪くない。でもこの状況、どうすればいいんだ!!」僕の頭の中は半ばパニックに陥っていた。

先輩は黙って立ち上がり、水を飲みに外の水道へ歩き出した。「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。」いつも見ている先輩の大きな背中が、いつもよりも小さく見えた。

あなたも先輩のような理想の筋肉を!!

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【終戦の日】平和と戦争を考えるうえで意識しておきたい5つの視点

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 8月は戦争についての特番や映画がテレビでよく放送されています。放送を観て、戦争や平和について考えられた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
8月 6日 広島 原子爆弾が落とされる
8月 9日 長崎 原子爆弾が落とされる
8月15日 ポツダム宣言を受け入れ 終戦

 これからの平和な世界を考える上で大切にしたい5つの視点をまとめたいと思います。

視点① 戦争を激化させたのはだれか

 戦争を決断し、攻撃の命令をしたのは軍部であり、政府です。ですが、政府、軍部ばかりが戦争を押し切ったのでしょうか。戦争を支持したもう1人は当時の世論でした。国民の多くが泥沼化した日中戦争をドイツと手を組んで打破しようと言い始めたのです*1
 国民一人一人の絶対に戦争をしないという世論をつくっていくことが平和な世界をつくっていく上でとても大切なのだということを自覚しておくべきでしょう。

視点②    平和が大事、だから戦わない?

 大平洋戦争末期、日本は特攻などの非人道的な戦略を実行してきました。自分ならそんなことはしない。と思いそうですが本当にそうでしょうか。戦局は日本の圧倒不利な状況で、戦争はダメだからと本当に戦わずにいるでしょうか。自分が戦わなければ家族はどうなるのでしょうか。ここが戦争の怖いところの1つだと思います。今の戦争は第二次世界大戦のような戦い方にはならないことは承知ですが、自分が戦わなければ家族はどうなるのかということを考えたとき、「平和」のために「戦う」という選択肢しかないのではないでしょうか。
 戦争が始まってから平和を訴えてももう遅い。平和の大切さを説くのは戦争が始まる前、つまり今なのだと思います。

視点③ 日本は戦争の被害者なのか?

 大平洋戦争では多くの方が犠牲になりました。東京大空襲約10万人、広島約14万人、長崎約7万人、大平洋戦争全体では約350万人の方が犠牲になりました。数字で言えば簡単ですが、この一人一人に大切な家族がいたことを想像するといたたまれません。
 一方で日本は他国にどれだけのことをしたのでしょうか。ちなみに中国の犠牲者は1000万~2000万人です*2真珠湾攻撃南京事件など日本が行ったことも視野に入れて戦争を考えたいです。

視点④ 日本は世界で唯一の核兵器被爆国である

 世界から核兵器廃絶を訴えるとき、日本は先頭を切る責務があると思います。核兵器の恐ろしさをどの国よりも知っているからです。
 核兵器がどのようなものかを学び、それを我々は一番発信していくべきです。

 

視点⑤    他県とは争わないのに他国とは争う現代

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 国と国とが争いをする。日本で県と県は仲良くするのに、国と国とになると何故だか争う。なぜでしょうか。
 日本も戦国時代は県?と県?が争っていました。が、今はそんなことありません。これはやはり仲間意識ではないでしょうか。本来地球には国境何でいうものはありません。住んでいる国が違うだけで、○○人は~という差別や偏見が未だに我々の心の中にはないでしょうか。私たちは同じ地球に住む人間として、人間らしくありたいものです。

 

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*1:河合敦『日本史は逆から学べ』光文社、2017年、41頁。

*2:小和田哲夫『日本史見るだけノート』宝島社、2016年初版、200頁。

【夏読書】夏に読みたいおすすめの本ベスト! 青春、戦争、子ども向け小説・エッセイ

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夏到来!

夏にぴったりの本を読んで、夏をさらに満喫しましょう!

今回は夏をテーマにした小説やエッセイを集めました。本選びの参考になれば幸いです。

森見登美彦『ペンギンハイウェイ』

                      

街に突然現れた「ペンギン」。このペンギンの正体を突き止めるべく自称研究家の小学生が歯科衛生士のお姉さんたちと研究を続けていく夏物語。ペンギンはどこから現れたのか、ペンギンにどんな秘密があるのか!?小学生の夏休みに戻ったようなワクワクした気持ちで読める一冊です。

   

 

湯本香樹実『夏の庭』

                      

「おじいさんがひとりで死ぬところを見たい」そんな好奇心をもった小学生3人組の夏休みの物語。近所のおじいさんを観察し始めた3人だったが、おじいさんは死ぬどころか元気になっていくようだ。そしていつしか、おじいさんとの交流が始まる。待ちに待ったはずのおじいさんの最期に3人は何を思うのか。

 

恩田陸夜のピクニック

                     

高校生活最後を飾るイベント 「歩行祭」。それは全校生徒が夜を徹して80キロ歩き通すという、北高の伝統行事だった。甲田貴子は密かな誓いを胸に抱いて、歩行祭にのぞんだ。三年間、誰にも言えなかった秘密を清算するために一ー。学校生活の思い出や卒業後の夢など語らいつつ、親友たちと歩きながらも、貴子だけ

は、小さな賭けに胸を焦がしていた。本屋大賞を受賞した永遠の青春小説。

 

片桐はいりグアテマラの弟』

                      

グアテマラに仕事と家族のある弟と日本で家事に明け暮れる母との関係を描いたエッセイ。グアテマラってどこ?というところから始まった一冊でしたが、読んだ後はグアテマラの空気を吸ってみたい気持ちになりました。重くなりがちな家族の問題なども片桐さんの文章では温かく取り上げられているように思います。グアテマラでのハプニングを交えたエピソードも面白く、笑いあり感動ありのエッセイです。に海外に出かけたくなるような一冊です。

 

角田光代『キッドナップツアー』

                      

五年生の夏休みの第一日目、私はユウカイ(=キッドナップ)された。犯人は二か月前から家にいなくなっていたおとうさん。だらしなくて、情けなくて、お金もない。そんなおとうさんに連れ出されて、私の夏休みは一体どうなっちゃうの? 海水浴に肝試し、キャンプに自転車泥棒。ちょっとクールな女の子ハルと、ろくでもない父親の、ひと夏のユウカイ旅行。

 

道尾秀介『向日葵の咲かない夏』

                      

夏休み前の終業式の日。先生に頼まれて欠席していた同級生のS君にプリントを届けに行くと、そこには首を吊ったS君が!そして現場に訪れた警察に聞かされたのは「死体はなかった」ということ。なんと死体が消えたのだ!?

この事件から僕と妹のミカはいつもと違う奇妙な夏休みを過ごすことに。不思議な物語に夢中になって読み進めてしまう傑作ミステリー。

 

大岡昇平『野火』

                      

第二次世界大戦中、敗北が決定的になったフィリピン戦線で本隊を追放されて島中をさまよう田村一等兵。先住民や仲間との死と隣り合わせの駆け引きで、どんどん飢えていく。木の根や蛭まで食べたあげく、ついに仲間の屍体に目がいってしまう。

東南アジアの島で起きた悲惨な出来事を大岡昇平の実体験を元につくられた本作。終戦を迎える夏に本書を読んで、戦争と平和について考えたい。

   

 

又吉直樹『火花』

                      

お笑いコンビ・スパークスの徳永は、花火大会の営業で先輩芸人・神谷に出会う。その破天荒さに惹かれて神谷と行動を共にすることになるが、芸人として荒れてくるようになり神谷との関係も疎遠に…。人生と夢と生き方を考える一冊。

   

 

さいごに

いかがでしたでしょうか。

夏休みに夏を感じる小説・エッセイで夏をさらに楽しみましょう!

 

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自分で自分を褒めるを続けたら1週間で変化が!

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日本人の自己肯定感が低いと言われています。

自分に自信がもてないと楽しくない

そして何より幸せでない。

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内閣府の調査によると、「自己肯定感の高さ」と「将来に希望をもてるか」という2つには関係があるようです。

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内閣府:子ども・若者白書]

⭐️  自分に満足している人の83.1%が将来に希望をもっている

⭐️  自分に満足していない人の56.5%が将来に希望をもてていない

 

自分を肯定できるかで「仕事へのやる気」「社会参加」「心の状態」も大きく変わるようです。自己肯定感は高くもちたいですが、世の中は厳しい…。ではどう自分を認めてやっていけばいいのか。

今回は自己肯定感について考えてみます。

自分を自分で褒める「ほめ日記」

「ほめ日記」というものがあります。タイトル通り自分のことを褒める日記を毎日行うのです。

え!と思われるかもしれませんが、どうやら自分で褒めるのも他人から褒められるのと同じくらい脳にはとても良いようです。

なんだか照れ臭いですが、書き終わった後には心の中が晴れているのが分かります。ちょっと「幸せ」って感じです。

 

「ほめ日記」ならぬ「ほめ妄想」

誰も見ないと分かっていても照れ臭く思ったことがなかなか文になんでできない!文字で残したくないって方もいらっしゃいますよね。私も最近はそうです…

そこで始めたのが「ほめ日記」ならぬ「ほめ妄想」です(本には書いてません)。

頭の中でその日の自分の頑張りややり遂げたことを褒めちぎります。やるのは帰りの車内か寝る前。時と場所を選ばないので手軽に行うことができます。頭の中なので他の人に覗かれる心配もありません。

 

自分を自分で褒めるようになって

メリット!

①  大きい仕事、たくさんの業務に対して「無理〜(>_<)」から「できるかも」「やってみよう」に変わった

②  自分を褒める癖をつけると、他の人の褒めポイントが分かり後輩も上手に褒められるようになった

③  幸福感に包まれて眠れる→睡眠にもいい?

 

やりかたなどマンガで分かりやすく書かれているので是非ためしてみてください。

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【名言・格言】文豪・小説家からのメッセージ選 仕事に生活に明日に効く言葉まとめ

格言で生活を考え、明るい前向きな気持ちで生きよう

小説を読んでいると思わず目が留まってしまう

「心に響く一文」

こういう一文に出会うことってありませんか?

私も一冊に1つくらいは、心に響く一文、お気に入りの一文に出会います。

今回はこれまでメモしてきた小説家たちの名言を紹介していきます!文豪たちからの言葉を味わっていきましょう。

江國香織

『号泣する準備はできていた』

                         

デパート好きの美代子が、家族の為に買った荷物を店員から受け取る場面での一文。

デパートで、自分以外の誰かのための買物をするくらい幸福なことはない。

江國香織「こまつま」『号泣する準備はできていた』新潮社、106頁。

自由とは、それ以上失うもののない孤独な状態のことだ。

江國香織「手」『号泣する準備はできていた』新潮社、178頁。

 

小川洋子

博士の愛した数式

                         

博士が直線の定義には端がなく、無限に伸びてゆかなければならないから、現実の紙に本物の直線を描くことは不可能であると説明したのに続けて博士が言った一言。

「物質にも自然現象にも感情にも左右されない、永遠の真実は、目には見えないのだ。数学はその姿を解明し、表現することができる。なにものもそれを邪魔できない」

小川洋子博士の愛した数式』新潮社、179-180頁。

 

薬指の標本

                        

標本にしたものをいつか返すのかと私が訪ねたときの標本技術士の弟子丸の言葉

もちろん依頼者たちは、好きな時に自分の標本と対面することができます。でも、ほとんどの人がもう二度とここへは現れません。きのこの彼女もそうです。封じ込めること、分離すること、完結させることが、ここの標本の意義だからです。

小川洋子薬指の標本』新潮社、23頁。

 

安部公房

砂の女

                        

砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められた男が、そこからの逃亡に失敗し、1週間何もかもを我慢した末に孤独というものを見出したときの一文。

「孤独とは、幻を求めて満されない、渇きのことなのである。」

安部公房砂の女』新潮社、236頁。

砂の女」冒頭の一文。砂の村からの逃亡を予感させる始まり方です。

罰がなければ、逃げるたのしみもない。

安部公房砂の女

 

箱男

                        

箱男」という物語の主人公は段ボールを頭からすっぽりと被って生活している男(=箱男)です。「見ること」「見られること」について考えさせられる文学作品です。

見ることには愛があるが、見られることには憎悪がある。見られる傷みに耐えようとして、人は歯をむくのだ。しかし誰もが人間になるわけにはいかない。見られた者が見返せば、今度は見ていた者が、見られる側にまわってしまうのだ。

安部公房箱男』新潮社、36頁。

 

芥川龍之介

「桃太郎」

                        

この作品は、有名な桃太郎の話を平穏な日々を過ごしている鬼に人間が「退治」といって非情にも殺しにかかってくるという鬼目線も交えながらの皮肉交じりの滑稽な物語です。そんな鬼から見た人間に対して鬼の親が鬼の子に向けて。

人間というものは角の生えない、生白い顔や手足をした、何ともいわれず気味の悪いものだよ。おまけにまた人間の女と来た日には、その生白い顔や手足へ一面に鉛の粉をなすっているのだよ。それだけならばまだ好いのだがね。男でも女でも同じように、譃はいうし、欲は深いし、焼餅は焼くし、己惚は強いし、仲間同志殺し合うし、火はつけるし、泥棒はするし、手のつけようのない毛だものなのだよ……

芥川龍之介「桃太郎」

 

夏目漱石

『こころ』

                        

田舎者の親類には別に悪い人間がいないと言ったのに対して先生が苦々しく言った一言。

「(----)しかし悪い人間という一種の人間が世の中にあると君は思っているんですか。そんな鋳型に入れたような悪人は世の中にあるはずがありませんよ。平生はみんな善人なんです。少なくともみんな普通の人間なんです。それが、いざという間際に、急に悪人に変るんだから恐ろしいのです。だから油断ができないんです。」

夏目漱石『こころ』新潮社、87-88頁。

 

三四郎

                        

三四郎と広田先生の会話で、広田先生の年代の人が偽善家が多いのはなぜかと三四郎が尋ねて

「君、人から親切にされて愉快ですか」

「ええ、まあ愉快です」

「きっと? ぼくはそうでない、たいへん親切にされて不愉快な事がある」

「どんな場合ですか」

「形式だけは親切にかなっている。しかし親切自身が目的でない場合」

人間はね、自分が困らない程度内で、なるべく人に親切がしてみたいものだ。

夏目漱石三四郎

確かに同じ歳の人でもしっかりしているのって…

二十前後の同じ年の男女を二人並べてみろ。女のほうが万事上手だあね。男は馬鹿にされるばかりだ。女だって、自分の軽蔑する男の所へ嫁へ行く気は出ないやね。もっとも自分が世界でいちばん偉いと思ってる女は例外だ。
夏目漱石三四郎

「断片」

現代の社会には「先生」不在であることを綴った文

現代ノ青年ニ理想ナシ。過去ニ理想ナク、現在ニ理想ナシ。家庭ニアツテハ父母ヲ理想トスル能ハズ。学校ニ在ッテハ教師ヲ理想トスル能ハズ。社会ニアッテハ紳士ヲ理想トスル能ハズ。事実上彼等ハ理想ナキナリ。父母ヲ軽蔑シ、教師ヲ軽蔑シ先輩ヲ軽蔑シ、紳士ヲ軽蔑ス。此等ヲ軽蔑シ得ルハ立派ナコトナリ。但シ軽蔑シ得ル者ニハ自己ニ自己ノ理想ナカルベカラズ。自己ニ何等ノ理想ナクシテ是等ヲ軽蔑スルハ、堕落ナリ。

「断片」、明治三十九年

詳しくはこちらで紹介しています↓

 

三島由紀夫

金閣寺

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金閣寺 (新潮文庫)

吃音をもった少年(のちに金閣寺を放火する)の内面について述べた一節。

何か拭いがたい負け目を持った少年が、自分はひそかに選ばれた者だ、と考えるのは、当然ではないか。この世のどこかに、まだ私自身の知らない使命が私を待っているような気がしていた。
三島由紀夫金閣寺』新潮社、8頁。


金閣寺が空襲によって焼かれる可能性があることを知ったときの少年の心理

金閣はあるいは私たちより先に滅びるかもしれないのだ。すると金閣は私たちと同じ生を生きているように思われた。
三島由紀夫金閣寺』新潮社、57-58頁。

俺たちが突如として残虐になるのは、たとえばこんなうららかな春の午後、よく刈り込まれた芝生の上に、木洩れ陽の戯れているのをぼんやり眺めているときのような、そういう瞬間だと思わないかね。
三島由紀夫金閣寺』新潮社、135頁。

 

芥川龍之介

「河童」

                        

トックという河童が語る芸術論。

トックの信ずるところによれば、芸術は何ものの支配をも受けない、芸術のための芸術である、従って芸術家たるものは何よりも先に善悪を絶した超人でなければならぬというのです。
芥川龍之介「河童」


角田光代

『さがしもの』

                        

おばあちゃんの幽霊に死ぬのは怖かったかと尋ねたときのおばあちゃんの返答。

死ぬのなんかこわくない。死ぬことを想像するのがこわいんだ。いつだってそうさ、できごとより、考えのほうが何倍もこわいんだ。
角田光代『さがしもの』新潮社、183頁。

 

吉野源三郎

君たちはどう生きるか

                        

おじさんから中学生のコペル君へのメッセージ。

だから、こういう事についてまず肝心なことは、いつでも自分が本当に感じたことや、真実心を動かされたことから出発して、その意味を考えてゆくことだと思う。君が何かしみじみと感じたり、心の底から思ったりしたことを、少しもゴマ化してはいけない。そうして、どういう場合に、どういう事について、どんな感じを受けたか、それをよく考えて見るのだ。そうすると、ある時、ある所で、君がある感動を受けたという、繰りかえすことのない、ただ一度の経験の中に、その時だけにとどまらない意味のあることがわかって来る。それが、本当の君の思想というものだ。
吉野源三郎君たちはどう生きるか岩波文庫、53-54頁。


太宰治

『グッド・バイ』

                        

太宰治もこんなこと思ってたのですね…

女は、たいてい、これくらい食うの普通だわよ。もうたくさん、なんて断っているお嬢さんや何か、あれは、ただ、色気があるから体裁をとりつくろっているだけなのよ。
太宰治『グッド・バイ』

 

村上龍

コインロッカー・ベイビーズ

                        

「自分の欲しいものが何かわかってない奴は石になればいいんだ、あのあけびの女王は偉いよ、だって欲しいものが何かわかってない奴は、欲しいものを手に入れることできないだろう?石と同じだ、あのバカな娘はずっと石のままだったらよかったんだ」

村上龍コインロッカー・ベイビーズ講談社、417頁。

もう忘れることはない、僕は母親から受けた心臓の鼓動の信号を忘れない、死ぬな、死んではいけない、信号はそう教える、生きろ、そう叫びながら心臓はビートを刻んでいる。筋肉や血管や声帯がそのビートを忘れることはないのだ。

村上龍コインロッカー・ベイビーズ講談社、562頁。

まとめ

本を読んでいてふと目が留まってしまう一文、いかがでしたでしょうか。文豪の一つ一つの言葉にはハッとさせられますね。ぜひみなさんのお気に入りの一文も教えてください!

 

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【漢字雑学】「台風」はなぜ「大風」と書かないのか…ほか子どもや友人に話したくなる漢字の話

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なぜそう書くの?意味は?

天気予報で台風のニュースを観ていた時のことです。

「【たいふう】ってなんで【台の風】と書くの!?それより【大風】の方が意味が伝わるんじゃない!?」

普段は何も気にせず見過ごしていましたが、漢字について疑問に思うことがたまにあります。その度、スマホにメモしておき帰宅してから漢和辞典で調べるようにしています。

今日はその中から面白いなと思った漢字の不思議を以下のラインナップでご紹介します。時間のない方も気になるところだけでも読んでやってください。

【読破】は読んだあと破り捨てる!?

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「読破」という言葉があります。この熟語もよく考えると不思議な字ですよね。中国では古くから、読み終わった書物は破り捨てて…

なんてことはもちろんありません。漢字辞典で調べてみると、納得のいく意味が載っていました。この「読破」の【破】にはもう一つの意味があるようです。

【破】

①  やぶる。

②  動詞に添えて、つくす・しとげる意を示す。「読破」

③  文意などを解きあかす。「破題」

④  顔をほころばせる。「破顔」

赤塚忠『漢和辞典 第五版』旺文社、746頁。

この場合②の「やりとげる」という意味が使われています。調べてみて納得しました。「突破」「走破」なども同じ用例の熟語ですね。

 

【抹茶】の【抹】って抹殺の抹だよね…こわい

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抹茶味って人気ですよね。でも抹茶の「抹」ってこわい…。だって「抹殺」の「抹」なんですもの!なんで手偏の漢字なの!?違う部首の方がしっくりきませんか!?例えば

 草かんむり「茉」

 木へん「木末」←こんな漢字はありませんが…

とかの方がいいんじゃないの!?しかしこれも調べてみると納得でした。【抹】にはこのような意味がありました。

【抹】

①ぬる。

②する。こする。

③ぬぐう。

④こな。粉にする。

【抹茶】

ひき茶。うすでひいて粉にした茶。

赤塚忠『漢和辞典 第五版』旺文社、440頁。

抹茶が「粉にした茶」という意味だったとは。勉強不足で全く知りませんでした。粉にした茶だから【抹】の字が使われているということで納得できました。粉にするのですから手偏だというところも納得です。

 

【たいふう】はなぜ【台風】!?【大風】じゃないの!?

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「たいふう」って風が強い訳だから「大風」でいいんじゃないかなと思ったのは私だけでしょうか。しかも「台の風?」というのが意味不明です。これも調べてみると納得。

「たいふう」というのは、元々は【颱風】だったが、風編が省略されて簡略化した【台風】に書きかえられたそうです。

【颱】

意味:たいふう

【颱】は、それ自体が台風という意味だそうです。

漢字には「象形文字」「指示文字」「会意文字」「形成文字」の4種類がありますが、【颱】はその中の形成文字です(形成文字くわしくは次の見出しで!)。つまり

「風」が意味を表す部分

「台」が音を表す部分

その意味を表すのは「風」が省略されて、音を表す「台」だけが残ってしまっています。熟語【台風】は、意味を表す「風」が省略されてできたから「台の風」と意味のわからない熟語になってるのですね。

 

「暮」「墓」「募」は全て「ボ」と読む!? ~形成文字の秘密~

「暮」「墓」「募」の音読みは全て「ボ」です。これは、この三つの漢字が形成文字であるからです。

形成文字とは、「意味を表す部分と音を表す部分からなる漢字」です。

「莫(ボ)」+ 意味「日」=「暮」

莫(ボ)」+ 意味「土」=「墓」

「莫(ボ)」+ 意味「力」=「募」

①は日が沈むから「暮れる」

②は土に埋めるから「墓」

③は(力を使って)招き集めるから「募」

となります。「莫(ボ)」は音を表すだけなので意味はありません。逆にこの「莫(ボ)」という部分を3つの漢字はもっているから、3つとも「ボ」という音読みをするわけです。

他にも「裁」「載」「栽」なども調べてみると面白いですね。

※意味も音も表す会意形成文字という漢字もありますので、その点だけ留意しておいてください。

☆どっちが正しい漢字!?

ここからはどっちが正しい漢字なのか、どういう違いがあるのかを見ていきます。全て意味の違いを言えるでしょうか!?私は知らなかったので調べました…笑

「寂しい」「淋しい」の違い

「さびしい」という漢字、どっちを使えばいいのと悩んだことがあるのではないでしょうか。

【寂】

ひっそりとものさびしい。

【淋】

水をそそぐ。水のしたたり落ちるさま。

「淋」の漢字自体に「さびしい」という意味はなく、後から日本で付け加えられたもののようです。更に、「寂」は常用漢字で、「淋」は常用外ですので、教科書や新聞に出でくるのは「寂しい」です。

使い分けとしては、「寂しい」がものさびしい様子を表し、「淋しい」がさびしい心情の様子を表します。

 

「飲む」「呑む」の違い

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基本的に「飲む」を使えば無難な感じはありますが、では「呑む」はどういう場合に使うのでしょうか。

【飲】

広く、湯水などを飲む。

【呑】

のみ下す。まるのみにする。

本来なら「飲む」を使うのが正しいようですが、豪快さを出したいときは「呑む」を使うといったところでしょうか。まさに「呑んべえ」は「呑」が似合いますね!ヘビが虫を呑むようにお酒をのむ場合はこちらを使ってください!笑

 

「了解」「諒解」の違い

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とある漢字に詳しい先輩からきたメールにこうありました。

「諒解です。」

かっこいー!

と一瞬思いましたが、「了解」ではないのか!?どう違うの!?という疑問がふつふつと湧いてきました。

調べてみると、どうやらもともとは「諒解」だったのが、「了解」に書きかえられたようです。ちなみに【諒】の意味は

【諒】

思いやる。察する。

まこと。

だそうです。

さらっと「諒解」を使ってみましょう!

 

さいごに

漢字って色々考えたり調べたりすると漢字の由来が分かって楽しいですね。

これからも日常で疑問に感じた「漢字」は調べていきたいと思います。

この漢和辞典が愛用で本記事の漢字の意味の出典は全て旺文社『漢字辞典』です。

最後まで見ていただきありがとうございます。

おすすめの旺文社の漢字辞典です。大学の国語の先生が薦めてくれて購入しました。

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【厳選】春に読みたいおすすめの小説5選

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新生活・新学期・新年度を明るい前向きな本で

春になると気持ちも新たになり、新鮮な心持ちですよね。そんな春にはさわやかで明るい小説を読みたくはありませんか。今回は新生活や新学期を迎える春にぴったりの本をご紹介します。

獅子文六『コーヒーと恋愛』

まだテレビが新しかった頃、お茶の間の人気女優 坂井モエ子43歳はコーヒーを淹れさせればピカイチ。そのコーヒーが縁で演劇に情熱を注ぐベンちゃんと仲睦まじい生活が続くはずが、突然“生活革命”を宣言し若い女優の元へ去ってしまう。悲嘆に暮れるモエ子はコーヒー愛好家の友人に相談…ドタバタ劇が始まる。人間味溢れる人々が織りなす軽妙な恋愛ユーモア小説。

モエ子とベンちゃんのだらしなくも愛らしいキャラクターを好きになること間違いなし。コーヒーがつなぐ2人の恋を獅子文六がコミカルな文章で描きます。

 

恩田陸夜のピクニック

繫ぎ留めておきたい、この時間を。

小さな賭けを胸に秘め、貴子は高校生活最後のイベント歩行祭にのぞむ。誰にも言えない秘密を清算するために――。永遠普遍の青春小説。

高校生活最後を飾るイベント「歩行祭」。それは全校生徒が夜を徹して80キロ歩き通すという、北高の伝統行事だった。甲田貴子は密かな誓いを胸に抱いて、歩行祭にのぞんだ。三年間、誰にも言えなかった秘密を清算するために――。学校生活の思い出や卒業後の夢など語らいつつ、親友たちと歩きながらも、貴子だけは、小さな賭けに胸を焦がしていた。本屋大賞を受賞した永遠の青春小説。

高校生が徹夜で80kmを歩く「歩行祭」。この80kmでの青春劇に春を思わされます。春に是非読みたい一冊です。

 

森沢明夫『虹の岬の喫茶店

小さな岬の先端にある喫茶店。そこには美味しいコーヒーと、お客さんの人生に寄り添う音楽を選曲してくれるおばあさんがいた。彼女は一人で店を切り盛りしながら、時折海を眺め何かを待ち続けていた。その店に引き寄せられるように集まる、心に傷を抱えた人々――彼らの人生は、その店との出逢いで、変化し始める。疲れた心に寄り添う、癒し小説。

店主悦子さんの温かい人柄に惹かれた6人の物語の一つ一つが、美しい岬の景色と混ざり合います。読み終えた後は、春の岬をドライブしたくなるような、そんな気持ちで満たされます。

 

三島由紀夫潮騒

文明から孤絶した、海青い南の小島――潮騒と磯の香りと明るい太陽の下に、海神の恩寵あつい若くたくましい漁夫と、美しい乙女が奏でる清純で官能的な恋の牧歌。人間生活と自然の神秘的な美との完全な一致をたもちえていた古代ギリシア的人間像に対する憧れが、著者を新たな冒険へと駆りたて、裸の肉体と肉体がぶつかり合う端整な美しさに輝く名作が生れた。

美しく力強い海と新治の鍛えられた肉体。初江の父に会うことを禁じられた新治と初江の純な恋の結末は!?三島由紀夫作品の中でも特に読みやすい春にぴったりな一冊です。

 

デイル・ドーテン『仕事は楽しいかね』

     

四月から新しい部署、新しい同僚を迎えての仕事が始まる方も多いのではないでしょうか。新学期の始まりにもう一度「仕事」について考えてみてはいかがでしょうか。物語形式で「遊び感覚でいろいろやって 、成り行きを見守る 」「きみたちの事業は 、試してみた結果失敗に終わったんじゃない 。試すこと自体が欠落してたんだ 」など、仕事について考えさせてくれる一冊です。

 

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